ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド タイトルが示す意味
2017年3月3日に発売された任天堂ゲーム『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』。
言わずと知れた大変有名なゲームであるが、そのタイトルの意味や由来について考えてみたことはあるだろうか。
本記事では作品という観点から、「ブレスオブザワイルド」というタイトルについて考察していく。
タイトルの持つ役割
はじめに、「ゼルダの伝説」シリーズにおけるタイトルのつけられ方について考えてみる。
時のオカリナ、ムジュラの仮面、夢をみる島、トワイライトプリンセス…
当然のことではあるが、各々物語の要となるものがそのタイトルに選ばれている。
そもそも、「ゼルダの伝説」シリーズにおける物語とは、どのようなものであったか。
簡単に言えば、ハイラルとその王女ゼルダを救うための、勇者リンクによる冒険の物語といったものだろう。
そしてその冒険とは、全くの新しい世界あるいは未知の世界を駆け巡る旅であったはずだ。
そう、リンクはどの時代においても、ハイラルとゼルダを救うという理由で、新しい世界、未知の世界を冒険していたのだ。
それでは、その”冒険”の要とは何か。
それは、冒険を始めさせるもの、すなわち別世界とリンクを繋ぐものだ。別の世界に介入し冒険するためには、今いる世界と別の世界を繋ぐ何かが必要不可欠である。
ここまでをまとめると、「ゼルダの伝説」シリーズにおけるタイトルは別世界とリンクを繋ぐものだと言うことができる。
「ブレスオブザワイルド」を振り返る
では、「ブレスオブザワイルド」のストーリーとはどのようなものだったか。
100年前、ハイラル王国は厄災に見舞われ、沢山の数えきれない命が失われた。無念にも打ち破れたハイラルの英傑リンクであったが、100年の眠りを経て再びハイラルとゼルダを救う旅にでる…
といったものだろうか。
ここで、これまでの流れを組み入れる。
本作における新たな世界、未知の世界というのは、100年後の世界である。
それでは、リンクと100年後の世界を繋ぐものとは何か。
回生の祠?シーカー族?覚醒後のゼルダ?
様々な考え方がありそうではあるが…
私個人としては、声高に唱えたい。これぞまさに”ブレスオブザワイルド”だ、と。
Breath of the Wild とは?
では、”ブレスオブザワイルド”とはどういう意味を持つ言葉なのか?
”Wild”とは、「荒野」「荒地」を表す名詞であり
”Breath”とは、「息」「生命力」「風」などを表す名詞であるそうだ。
この2つの言葉を「ブレスオブザワイルド」の世界に当てはめてみる。
”Wild”とは、厄災によって人々の命自然もろとも滅ぼされ「荒野」と成り果てたハイラル
”Breath”とは、100年かけて新たな生命活動を構築したハイラルの「生命力」
といったところだろうか。
このことを踏まえると”ブレスオブザワイルド”の表す意味は
ハイラルの生きる力
というものになるはずである。
タイトルにこめられた思い
このハイラルの生きる力こそ、英傑リンクと100年後の世界を繋ぐものであり、ハイラルとゼルダを救うことに繋がるものであったと私は考えている。
説明を加えよう。
100年後の世界において、リンクはどのような冒険を経て再び厄災ガノンに挑んだのか。
力強い生命力を以て再生した、ハイラルの自然と人々。その恵みを、その助力を受け、闘い抜いた冒険だったのではなかろうか。
英傑リンクと100年後の世界を繋ぐもの、すなわち、100年後の世界におけるリンクの冒険を成立させるものは、まさにこのハイラルの生きる力だった、ということである。
厄災ガノンと戦い、ハイラルに平和をもたらしたのはハイラル全体の力によるものだった、とも言えよう。
何かにたよりきった誰かの物語ではなく、必死に生きようと前へ前へと進む生命の力が結果として合わさった、ひとつの王国の動きを描いた物語。それが「ブレスオブザワイルド」という、強く美しく壮大で、かつどこか儚い無常感を併せ持つ物語なのであろう。
ー以下感想などー
ブレワイタイトルの解釈はこれからも自分の中で変化しうるものであり、人や個人によっても変化しうるものであると思っております。本記事は、現時点で自分ができる解釈を長々と書き連ねたものですが、一つの考えとしてお楽しみいただけたら幸いです。
閲覧ありがとうございました。
ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム 3rdPV・タイトル考察
ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド続編『ティアーズオブザキングダム』。
2022年9月13日ニンテンドーダイレクトにて、3rdPVが公開、ついにそのタイトルが発表された。
歴代「ゼルダの伝説」シリーズにおいて、そのタイトルはその物語の要となるモノを指し示してきた。
本記事では、タイトルを結論として持つ3rdPVを通して、任天堂が我々に対し提示する『ティアーズオブザキングダム』について考察していく。
【目次】
3rdPVが提示したもの
これまでに公開された1stPV、2ndPVでは物語の詳細は明らかにされず、
・ガノンドロフを倒し再びハイラルを救う
・新しい力を用いて新たな世界を冒険する
という従来のゼルダの伝説シリーズに沿った、大まかな物語の流れが示されていた。
そして先日発表された3rdPVでは、ついにそのタイトルと同時に、物語の詳細が明らかにされることとなった。
では、3rdPVで明らかにされた、物語の詳細とは何か。
PVの文脈に注目した上で、提示された情報をたどっていく。
1. 未知の古代文明の存在
PVの前半にて提示されたのは、ブレワイの世界では見られなかった未知の古代文明の存在であった。
それがどういう文明であったのかを語るのが、前半の4つのシーンだと言えよう。
・厄災ガノンとの争いに関する歴史を持つことを示すシーン
・2ndPV既出の天空の地との結びつきを仄めかすシーン
・ハイラルの長でありガノン封印の要でもあるゼルダ姫との関わりを示すシーン
以上4つの描写から我々が受け取れるのは
天空の地にて栄える未知の古代文明が、厄災ガノンとの戦いと封印において、ハイラル王国そしてゼルダ姫と何らかの関係を持っている
ということだろう。
このような文明の説明を踏まえた上で、PVは後半へと移る。
2. リンクが得る新たな力
PVの後半で提示されたのは、今作の冒険にてリンクが得る新たな力だと捉えられる。
その新たな力はどんなものなのかを示したのが、後半の6シーンである。
・文明を持つ天空の地で、新たな冒険が展開されることを示すシーン
・天空の地とハイラルを繋ぐ力を示すシーン
・提示された力と古代文明の結びつきを仄めかす描写
これらの描写が我々に示すのは
ハイラルを救うための新たな冒険の舞台、天空の地とハイラルを繋ぐ力というのは、天空の文明からもたらされた力である
といったところではないだろうか。
このように前半での説明が、後半に示された”力”の説明と結びつき、そしてタイトルが明示され映像が終了する。
3rdPVの主旨を考える
それでは、今回3rdPV全体を通した任天堂の狙いとは何か。
先述した3rdPVの文脈・結論からして、本作におけるタイトルそしてその意味の明示だと言えるのではなかろうか。
先述の通り、3rdPVはその結論に至るまで、古代文明による天空とハイラルを繋ぐ力を説明していた。
そして、その”説明”に続く形で、本作におけるタイトル『ティアーズオブザキングダム』が映像を締めくくるものだった。
この「古代文明による天空とハイラルを繋ぐ力」の説明と、タイトル『ティアーズオブザキングダム』は、はたしてそれぞれが独立した断片的な情報なのか。
そうではなかろう。
映像の構成が作り手の意図を組むものとして、この連続した結びの関係こそ
古代文明による天空とハイラルを繋ぐ力=「ティアーズオブザキングダム」
を体現したもの。そしてこれこそ3rdPVの主旨だと、私は考えてやまないのである。
”ティアーズオブザキングダム”を考える
上記考察を受け、”ティアーズオブザキングダム”という言葉の意味について考えてみる。
”Kingdom”とは、「王国」「支配している場所」を表す名詞であり、
”Tears”とは、「涙」「雫」を表す名詞であるそうだ。
先述した物語の詳細と照らし合わせてみる。
”kingdom”という言葉は、3rdPV前半にて提示された、 未知の古代文明 を指していると考えられる。
一方、"Tears"という言葉はどうであろうか。
先述した物語の詳細と照らし合わせてみても、なかなか断定できる要素に欠けているように思われる。
では、先ほどの「ティアーズオブザキングダム=古代文明による天空とハイラルを繋ぐ力」という関係と照らし合わしてみるとどうだろうか。
この場合、”Tears”という言葉の示すところは、
ハイラルを救うためにリンクが得た、新たな冒険の舞台とハイラルとを繋ぐ力
だと受け取ることができる。
隠された物語の核心
なぜ”Tears”が、
「涙」「雫」の意味を持つこの言葉が、
上記『天空とハイラルを繋ぐ力』を指し示すことになるのか。
私としてはこの”Tears"の持つ意味こそ、いわゆるゲーム内での「タイトル回収」の感動に迫る要素であり、
物語の核心において明かされる、『ティアーズオブザキングダム』最大の見どころだと考えている。
ハイラルと未知なる文明には、いったいどのような繋がりがあったのか。
ハイラルを救うにあたり、この文明がリンク・ゼルダ・ガノンドロフとどう関わりを持つのか。
文明からもたらされる力は、物語をどう動かし、どのような結末に至らせるのか
”遊び”としてのゲーム以上に、「ゼルダの伝説」の中の1つの物語がどう紡がれるのか、発売が非常に楽しみである。
ー以下感想などー
PVで提示された一つ一つの情報が我々にとってどれも目新しく衝撃的なものであるため、それらを断片的に捉えてしまいがちですが、このような一つの映像作品こそその文脈に注目すべきだと思いました。
「未知なる古代文明の存在→ハイラルと新しい冒険の地を繋ぐ力→タイトル」という一連の流れこそ、任天堂からの言葉を使わない、タイトルの意味の提示なのではないでしょうか。
閲覧ありがとうございました。